ハチドリのブラジル・サンパウロ(時々日本)日記

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2014年 03月 04日

良かった良かった、本当に良かった。。。

私は25年間細々と同じ仕事を続けている。万年零細なその仕事は、所謂世間で言う
「まあ~お綺麗なお仕事ですわねえ・・・オーホホホ」となるのだが、実際には年中資金不足でアップアップしている。
何より資金不足も深刻だが、それ以上にそれを作ってくださる職人さんが一番大事だ。
私は最初の頃から「完全手作り」に拘ってきたからだ。
出来上がったものはいかにも人工的に創り出されたものでも、
それを生み出すまでのたゆまぬ努力があるからこそ、生まれる商品なのだろう。
職人Sさんは、この道に入ってもう50年近くになる。
最初は日本でお仕事をされていて、基礎は全てその当時の親方から学んだものだという。
その後縁あってブラジルに渡り、それからずっと一筋に職人の道を歩む。
職人の道は厳しい。厳しい上に感性が求められるクリエイティブな仕事だ。
ひとつひとつが最高の芸術作品と言っても過言ではない。
ずっとサンパウロに工房を構えて真面目にお仕事をされていたのだが、
ある日の夜、工房が悪い者たちによって荒らされ、莫大な被害を被る。
あまりの治安の悪さに閉口したSさんとAさんは日本に仕事場を移すことに決めた。
工房は東京・御徒町にあって良く通ったものだった。

私自身も25年この仕事を続けてきて、さぞや・・・と思われるだろうが、
そもそも「良い仕事」「誠実な仕事」がしたくて飛び込んだ道だ。
だから上に書いたように年中苦しくて喘いでいる。
近年の地金高騰がそれに拍車をかける。
最近、無駄なストックを増やさず完全受注製作に方針を転換し、それをSさんにも伝えた。
Sさんもこの業界の厳しさを良く理解し、快く了承してくださった。
その矢先のSさんの病気だった。
Sさんは昨年の4月に突然病に倒れた。
緊急手術を受けた結果、かなり進んだ大腸がんと判明。
「お腹が痛くて、我慢できずに病院に行ったら癌と言われて参った参った・・・」とのこと。
当時奥さんは、ブラジルの家に戻ってきていたので、至急呼び戻して看病を続けた。
奥さんもこの世界では名の知れたデザイナーなので、日伯で仕事を抱えているのだ。
そんな試練を乗り越えて、Sさんは手術を受け、無事退院した。
退院した途端に私からの怒涛のような仕事依頼、さぞや大変だったことと思う。
たまたま大量のリフォームとブライダルの注文が入ったのだった。
それでもギリギリ間に合って全てを完成させてくれた時は思わず感涙したものだった。
お客さまももちろん大変喜んでくださった。
長い間陽の目を浴びなかった指輪が、見事に蘇る瞬間、誰でも笑顔になれる。
私はその笑顔を見るのが大好きだ、というより笑顔を見るためにこの仕事をしているようなもの。
Sさんの良いところは、大きな仕事、小さな仕事を分け隔てなく丁寧にして下さることだ。
私の業界は、売りっぱなしということは絶対に許されない。
アフターケアーが全てだ。洗浄、磨き、サイズ直し、チェーン切れ修理に石留め、メッキ加工、ネックレスの糸換え等など…。
終わりのない作業が続く。そうしているうちに25年も経ってしまった。
今でもずっとご贔屓にしてくださるお客さまには感謝してもしきれない。
「何か(お祝いごとが)あった時はあなたにお願いするわね」
そんな言葉が何よりの宝物だ。
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腕が良いので、仕事は順調だったSさんだったが、病を得て第二の故郷ブラジルでゆっくり療養することを決め、6月にこちらに戻った。
5年間の日本での仕事は、年中期日に追われ、かなりしんどかったようだった。
昨年9月には、体調は日に日に良くなりつつあるとお聞きし、安心したものだった。
私が12月にこちらに戻り、一度Sさんのお宅に電話を入れてみたところ、不在だった。
まだお腹が痛むと言っていたし、どこか田舎で療養をされているのかしら?とその時は深く考えなかった。
そして最近また用事があり電話をしてみた。全然電話がかからない。。。
もしやもしや!?ドキドキしながら奥さんのAさんに最後の手段でメールを出す。
3つあったアドレスのうち、1つが届いたようだ。
何のことはない、すぐに連絡がきて「自宅の電話が壊れていたんです」
良かった、本当に良かった。
Sさんも体調を見ながら、少しずつ仕事を再開されているとのこと。元気なSさんの声も聞けて泣きそうになった。
ああ、私の宝物は職人Sさんだったんだ。
身を削るようにして一生懸命期日までに無理をして仕上げてくださっていたSさんに心から感謝。
こんなにまで一生懸命仕事に打ち込め、珠玉の作品を生み出してくださるSさんとのご縁をこれからも大切にしていこうと誓った!
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Sさんが作ってくださった、オール手作りのプラチナダイヤ一文字リング15石、0,35カラット。何とも丁寧な手仕事に感心しきり。
肌に吸い付くようにダイヤがさりげなく光る、とてつもなく上品な逸品。決して豪華ではないものの、日常的に使えるリングだと思う。
Sさん曰く「指はね、いつも動くだろう?だから真横までダイヤを入れた方がキレイなんだよね!」
なるほど…。そこでこんな言葉を思い出した。

永平寺のすりこ木に書かれている

身を削り 人に尽くさん すりこ木の その味知れる 人ぞ尊し

曹洞宗開祖道元禅師のお言葉。この言葉を思い出すたびに、尊いSさんの手仕事を思い、手を合わせる。
自身の身を削りながら一生懸命作り出してくださった大切なものを、これからも自分自身の宝物にしていきたい。
Sさん、Aさん、これからも宜しくお願いします!


by beijaflorspbr | 2014-03-04 22:18 | Jewelly | Comments(2)
Commented by とんぼう at 2014-03-05 11:07 x
ハチドリさん、こんにちは!

ハチドリさんのお気持ちの100分の一も持ち合わせないとんぼうですが、その心のこもった指輪を持たせていただいた「おっ家内」は貧乏性で、それこそ「だいじに、だいじに」仕舞い込んで使おうとしません。「もったいない!」「使わせていただくチャンスが来たら使います」と言って、それこそ「宝物」のように、まるで拝むようにタンスの奥にしまいこんで、時々出しては眺めています。その時の幸せそうな笑顔はほかの何物にも代えられません。本当にありがとうございます。「そろそろ次の宝物を」とは言ってみるのですが、「もったいない」と言って遠慮しています。やはり僕ら貧乏人には「もったいない」のでしょうか・・・・・。
Commented by beijaflorspbr at 2014-03-05 20:51
★とんぼうさん、コメントありがとうございます。
いつもとんぼうさんのコメントに笑わせて頂いています。
とんぼうさん、その節は大変ありがとうございました。
あの時の石の選別から出来上がりのプロセスは今でもしっかり覚えております。
奥さま折角の指輪をお使いになっていらっしゃらないのですか。。。
それはちょっとショックです!お使いになって、汚れたらいつでも
綺麗にお掃除させて頂きますから、と奥さまにお伝えくださいね。
いえいえ、「もったいない」だなんて。。。私も普段はあまり目にしない
ジュエリーたちですが、やはり見るとエネルギーが伝わってきて
元気になれるのですよ。女性は「見ているだけで幸せ…」を感じることのできる
不思議な生き物なのかもしれません。
もしそろそろ次を、とお思いになられた時は、遠慮なく声をお掛けくださいませ。
Sさんの完全復活の道も近いので、光りが見えてまいりました!
バンザイです~ヽ(^o^)丿
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