ハチドリのブラジル・サンパウロ日記

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2016年 06月 02日

大恩人の訃報

それは突然の訃報でした。1988年からずっと一緒に苦楽を共にしてきた大恩あるSさんが30日未明に息を引き取られたというお知らせが私のところに齎されました。その報に接し、ただただ愕然としました。あまりにも悲しすぎて涙も出ませんでした。大切な方を喪って動揺しているというよりは、脱力感から何も手に付かない有様です。Sさんは、ここに何度も書いたことがある私の仕事上の大恩人です。ベテラン職人であるSさんが決して妥協せず、あくまでも手造りに拘り、良いものだけを作り続けてくださったからこそ、28年間も終始一貫して完成度の高い良い仕事を続けて来られたのだと思っています。時には厳しくこの世界の常識や基本知識について教えて頂いたこともありました。真にS師匠は常に私の身近な良き相談相手でした。大きな仕事、小さな仕事を分け隔てなくこなしてくださる優しい職人さんでした。ちょうど3年前に突然の病を得てからは、子供たちの住むブラジルに戻って来られ、ご自宅でゆっくりとお仕事を続けておられました。定期的に連絡を取り続け、仕事もどんどんこなしてくださったのですが、15年の7月頃ふと連絡が途絶えてしまい、心配していたところ、奥さまから病気の再発を知らされました。幸い地域の良い病院に入院することが出来て、入退院を繰り返しつつ治療を受けておられました。ところが、今年に入っても容体は芳しくなく、とても仕事が出来る状態ではないことを知らされました。私はずっとSさんの復帰を願いつつもSさんのご友人のお陰で何とか仕事を続けていました。きつい薬を使っての治療に、遂に負けてしまわれたSさんの最期は平安だった、と奥さまからご連絡を頂きました。ずっと埃っぽい工房で一心不乱にお仕事に打ち込んで来られた尊敬するSさん。50年以上続けて来られた努力の賜物は、今もたくさんの方々を輝かせていますからどうかご安心ください。
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(Sさんに対するイメージは、こうして真摯に仕事と向き合っている姿です。)
28年間の心のこもった手仕事の数々を私は決して忘れません。もちろん、ここにあるものだけではなく、何百何千何万と私の前を通り過ぎていった渾身の作品の数々を、Sさんが生きて来られた確かな証として、大切に心に留めておきます。今さらながら、全ての作品の写真を撮らなかったことが悔やまれます!
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Sさん、長きに渡り、大変お世話になりました。そして辛く長い闘病生活、お疲れさまでした!今頃天国でゆっくり煙草を吸い、美味しいお酒を呑んでおられることでしょうか。ご病気でお会いできずお渡しそびれてしまったお酒はいったいどこへ持っていけば良いのでしょうか?2年前の記事を読み返してやっぱり涙が止まらなかった。あの時も我慢しながらも懸命にお仕事に打ち込んで下さったのですね。ありがとうございます。でもせめて息を引き取られる前にお会いし、一言お礼が言いたかった。


by beijaflorspbr | 2016-06-02 20:19 | Jewelly


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