ハチドリのブラジル・サンパウロ日記

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2013年 06月 20日

摩訶不思議なブラジル・サンパウロ(思うこと)

離れている家族や友達から「いったい、ブラジルって本当に大丈夫なの?」という質問や心配に纏めてお答えするためにも稚拙ではありますが、自身の思いをここに書いてみたいと思います。

日本や他の外国でも頻繁に報道されている大勢の市民によるデモは、ここのところ、サンパウロだけではなく、各地に広りを見せています。その内容もだんだん過激になってきて、デモだけでは飽き足らず、市の歴史建造物の破壊や、銀行強盗や、商店などの略奪、市民への強盗行為にまでエスカレートしている街は、全く収拾が付かず荒廃しきっています。治安も当然警戒レベルに達しています。テレビの解説によると、サッカーのコンフェデレーションズカップが開催されている今だからこそ、ブラジルに向いている世界中の目を自分たちの自己主張に向けようとでも言いたいのでしょうか。明らかに異常いや、非常事態です。サンパウロ市に限って言えば、デモの中心地となっているパウリスタ大通りは、南米随一の金融の中心街であると同時に、複数の病院を抱える重要な場所でもあります。救急患者が出た時にはどのように対処するというのでしょう。

確かにいきなり公共交通機関の運賃値上げが施行されたのは、大多数のサンパウロ市民にとっては大変なショック療法だったと思います。しかしながら、毎日暮らしている市民は、それだけでなくじわじわ上がる日用品や食料品の値上げに悲鳴を上げていたのも事実です。例えば、病気をしたらどうでしょう?一部の富裕層は、立派な病院に入り、最高の治療が受けられる反面、国民皆保険ではないブラジルでは、中流以下の人たちが病気をしたとしても標準治療を受けるのにはとてつもない時間と労力を必要とします。その結果、治療を諦め家に帰るほかないのが現状です。民間の病院は、年中医師や看護師不足に悩み、薬も充分ではありません。

教育面はどうでしょう?州立・市立学校とも無料とは言え、教師は年がら年中賃上げのストライキばかりしてちっとも教育に力を注ぎません。事実、こんな安月給ではとても暮らしていけないという低レベルの賃金で我慢を強いられています。では、治安面はどうなっているのでしょう?連邦警察、州警察、軍警察、市警察とに分かれ、守備範囲の争いを繰り返しています。こちらも驚くほど安月給で体を酷使して危険な仕事と向き合っているのが紛れもない事実です。犯罪も相変わらず多く、どこの警察署の留置場も刑務所も満杯の状態なのはよく知られているところです。今回はデモ隊に対して、催涙弾や、ゴム弾を発射したと、激しい批判にさらされ、今警察は手も足も出せない所謂「無警察状態」なのも不気味なことです。

ブラジルに住む人たちは、A/B/C/D/Eクラスを所得別に表現するそうです。一番上のAクラスの富裕層はほんの一握りとはいえ、多く存在するのは事実であり、ブラジルという国の富のほぼ全てを握っているのはそのAクラスの人たちです。労働者出身のルーラ大統領政権になり、低所得者層に手厚い政策が施され、政府からの補助金を受け、今までスラムと言われた質素な家に住み、公立校に通わせ、共働きをしてやっと生計を立てていいたD/Eクラスの層が、急にCクラスの仲間入りを果たしました。ルーラ大統領のお蔭で、Cクラスの仲間入りをした層は、この5年間で55%にも達したそうです。彼らは、少し小奇麗な家に住み、車を買い、テレビや冷蔵庫、PCをいとも簡単に手に入れることに成功しました。どうやって贅沢品を買うかというと、複数のクレジットカードを持ち、一枚一枚の決算日を変え、クレジット払いにして無理なく買う方法をとっていました。いくらかの収入があると、そのままそっくり消費をするような生活をここ数年間続けてきました。もちろん、貯金など夢のまた夢です。そうするうちに、当然日々の生活が物価高やインフレによってだんだん苦しくなると、フラストレーションを貯めむようになりました。「オルサメント(Orçamento=予算)」を遥かに超える出費に初めて気づいた人もいたようです。例えば、月々のカード支払額が「10万円」なら支払えたものが、11万円になり12万円になり、払えなくなったら容赦なく利子が付けられました。こうなると、儲かるのは銀行です。ブラジルにある市中銀行はどれもこれも最高益を上げ続けているそうです。このような社会の仕組みにもどんどん歪がきているのかもしれません。

私がブラジルに来てしばらく経った1980年代、ブラジルは深刻なハイパーインフレに悩まされていました。ハイパーインフレと言うのは、分かりやすく言うと、買い物に行く度に値段が貼りかえられているのです。デフレ気味の日本は、値札の下は必ず高い値段が付いていて安くなっていますよね。ハイパーインフレ時代のブラジルは、値札の下が一番安く、上に値札が貼られる度に高くなって行くのです。それが、ひどい場合いきなり2倍という表示があったのを覚えています。従って、当たり前のように、買占めが横行していました。それはすさまじい光景でした。政府は何度もデノミを繰り返し、その度に通貨の呼び名も変わりました。クルゼイロス→クルゼイロ・ノーボ→クルザード→クルザード・ノーボ→クルゼイロ→レアル。こんなに貨幣の呼び方が変わる国なんて他にあるでしょうか?呼び名が変わるたびに、1000が1になるデノミが実施され、その度に物価がまたどんどん上がっていきました。今はその時ほどは酷くないものの、昔の恐怖のインフレ時代のトラウマが残るブラジル人はかなり多いのではないでしょうか。我が家でもトリオさんがしきりにトマトの値段を気にします。それもそのはず、1年で230%も値上がりしたのですから。一事が万事、そんなに身近な食べ物が上がってしまったら当然生活を直撃します。トマトが全てという訳ではありませんが、市民の不満はかなり高まっていたと思います。デモ隊の中には、中高年の人や主婦もいました。「私たちも黙っていてはいけないのよ!」と立ち上がってしまったから大変なことになりました。

今日の午後、サンパウロ州知事とサンパウロ市長との話し合いで、R$3,20だった料金は、元のR$3,00に戻されました(但し実施は月曜日から)。今回の公共交通料金値上げ反対デモで失ったものは計り知れません。次々に建設される立派なサッカースタジアムも、市民から見ると、「目に見える税金の無駄遣い」と映るのは当然のことです。あるスタジアムは、当初の予算の4倍も罹って完成したという不可解な事実も表沙汰になっていますし。今日の公共料金が元通りになるニュースを受けて、市民はもう一度パウリスタ大通りを中心とする街に繰り出し、当然の如く道路を封鎖しました。「もっと教育を、もっと病院を!平和を!暴力のない社会を!」という主張も必要かもしれませんが、市内を交通マヒに陥れ、物流を絶ち、病人を不安に陥れ、治安を悪化させ、物を破壊し続ける人たちの行為にどれほどの救いがあるのでしょうか。やりきれない日々です。一日も早い終息を祈るばかりです。

一日も早くこの動画のような平和で活気のあるサンパウロに戻ることを祈ります!

by beijaflorspbr | 2013-06-20 11:33 | その他 | Comments(4)
Commented at 2013-06-20 20:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by beijaflorspbr at 2013-06-21 08:54
★鍵コメat 2013-06-20 20:14さま
いつもお世話になっております。
大きなデータをお送りくださり、ありがとうございます。どれほどのお時間が
掛かったことでしょう。申し訳ありません。
残念ながら、ちょうど途中で固まって止まってしまいます。
230MB辺りでダウンしてしまいます。
ブラウザを変えてもダウンロードは完了しませんでした。
他に良い方法があったら教えて頂きたいです。
どうぞ宜しくお願いいたします。
本当にありがとうございます!
Commented by poirot(ひさ) at 2013-06-21 16:37 x
了解です
自宅サーバだから回線が細いので時間切れになるのかもしれません
大容量ですからちょっとどうかなと思っていました
少し時間をください分割して容量を小さくしましょう
後でそれぞれ解凍し同じフォルダーに保存すれば同じことになりますから
出来たらまたお知らせします。
Commented by beijaflorspbr at 2013-06-21 21:56
★ひささん、度々恐れ入ります。
何とお礼を申し上げたら良いのでしょうか。
あの時のオフ会でお目にかかり、ご相談を申し上げたのがきっかけで
このようにすぐに実行に移していただけましたこと、心から感謝いたします。
今から買い物に出ますので、後ほどトライしてみますね。
夕方からはデモ隊が街に繰り出すので危なくて外出できません。
サンパウロも物騒になってきました。。。
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